サンゴの再生技術、人工基盤「コーラルネット」を鹿島が開発

サンゴの再生技術、人工基盤「コーラルネット」を鹿島が開発

鹿島(社長:中村満義)は、サンゴの再生技術として人工基盤「コーラルネット」(特許出願済)を開発しました。あわせてサンゴの生息できる環境を定量的に評価する技術も開発し、コーラルネットの最適な設置場所を事前に選定・評価し、サンゴの再生を効果的かつ確実に行うことが可能になりました。当社技術研究所葉山水域環境実験場での実験、及び沖縄県那覇港内をはじめとする現地試験により、サンゴ再生の効果を確認しています。

現在、内閣府沖縄総合事務局「実海域実験場提供システム」による支援をうけて再生実験を実施しており、引き続きモニタリングを継続しながら、コーラルネットに着生したサンゴが産卵し、成長して港内でサンゴが再生する状況までを確認していく計画です。 鹿島は、今後もこのような生物多様性の維持に向けた取り組みを、積極的に推進していきます。

サンゴの再生技術、人工基盤「コーラルネット」を鹿島が開発

開発の背景
近年、サンゴ礁は世界的に衰退しています。その要因は、地球温暖化による高水温、台風の波浪による破壊、陸域からの土砂の流出などさまざまです。サンゴ礁は海洋生物の1/4が生息すると言われるほどの生物多様性の場であり、臨海区域における港湾・空港整備や航路浚渫事業では、環境面に十分配慮した、効果的なサンゴ再生技術が強く望まれています。

しかしながら、これまでのサンゴの再生は移植が主であり、同じ遺伝子を持つサンゴを殖やすことによって遺伝的多様性が失われることや、移植地点の環境条件に左右されやすく、本来サンゴの生育が困難な場所での再生は難しいことから、サンゴ再生に適切な場所を選定することが大きな課題でした。

人工基盤「コーラルネット」
サンゴの生育にはわずかな土砂が影響します。鹿島が開発したコーラルネットは、シンプルな網状構造からなり、波、流れ、光も通り易く、かつ水中の微細な粒子(土の細粒分など)が基盤上に溜まらないため、サンゴの幼生が着生しやすく、成長を妨げません。また、薄型・軽量で運搬や設置が容易で、海底面から底上げして設置するため、サンゴの外敵であるオニヒトデも基盤上にはいあがれず、食害被害を防止できます。

材質は、耐久性を重視したステンレス製と、自然分解することで環境への影響が小さい酸化分解樹脂製の2種類があります。自然分解タイプのコーラルネットは大日本プラスチックス株式会社(社長:三木裕、大阪市北区)と共同開発しました。

サンゴの生息環境評価技術(HSIモデル)
コーラルネットの適切な設置場所の選定のために、サンゴの棲みやすさを数値で評価する技術を開発しました。サンゴを再生させるためには、成育できる環境の評価が非常に重要ですが、これまで勘や経験則にゆだねられていた再生場所の決定を、実際のデータやシミュレーションにより計算し、数値として評価するものです。

この方法は、HSI(Habitat Suitability Index;棲み易さ指標)モデルと呼び、サンゴの成育に影響する要因として、波、流れ、光の物理的環境に重点を置き、場所や水深の違いによってサンゴの生息適地を評価します。再生先の環境をあらかじめ評価することで、より効果的な再生ができるようになり、また将来の人工構造物設置などによる影響を予測することも可能になりました。

那覇港内での再生実証実験
那覇港内では、港外側に比べてサンゴの生息が極端に少なく、これは陸域から流入した赤土細粒分の流入と堆積が、サンゴの着生や成長に影響しているためと考えられています。

2011年春、那覇港内の4地点にステンレス製コーラルネット(50×50センチ)を、水深3m、5m、7mに設置したところ、最大で300群体以上のサンゴの着生が見られ、1年間の生残率も最大70%以上と高い結果となりました。コーラルネットを設置しないコンクリート面にはサンゴの着生・成育は見られず、細粒分が堆積し、藻類が繁茂していることがわかりました。

同時にサンゴの生息環境を評価するための波、流れ、光の物理的環境に重点を置いたモニタリングを実施し、HSIモデルの検証も行い、その有効性を確認しました。コーラルネットを設置して2年半が経過し、サンゴは最大7センチ以上となり基盤上部を被っています。

今後の展開
鹿島は、この技術を臨海工事における環境保全技術のメニューとして提案して行くとともに、サンゴ礁再生事業や慶良間諸島をはじめとした地域の環境保全活動など、生物多様性の維持に向けた取り組みを、これからも積極的に推進していきます。